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出会う光景から照らされるもの





娘と電車に乗っていた。




ある駅で重いエネルギーの女性が乗ってくるのが見えた。


彼女のそばには3歳くらいの女の子がいた。





私は何故かその母娘が気になって仕方がなかった。






気づくと、同じ駅で降りた。





長いエスカレーターに向かうお母さん。


お母さんの後を一生懸命についていく女の子。





彼女は後ろからついて来る女の子を


気にする様子もなくエスカレーターに乗ってしまう。





女の子はお母さんの後ろをヒョコヒョコとついていき


自力で間合いを取ってエスカレーターに乗った。






私は女の子がちゃんと乗れるのか


ヒヤヒヤしながら見守り自分も乗った。









女の子は立つ側と反対側に立ちながら


エスカレーターの手すりで遊び始めた。





下から上ってくる男性。





この間、お母さんは一度も振り返らない。




女の子がちゃんとエスカレーターに乗れたのか


安全に乗れているのか


見ようとしない。




ただじっと動かない。





上ってきた男性がエスカレーター中腹で


どうしたものかと立ち止まる。






私は女の子に「こっち側においで」と言う。



突然知らない人に声をかけられ


女の子は少し収縮して


お母さんの足元に抱きついた。





立ち止まった男性は女の子が


反対側に寄ったのを待ち


また上り始める。





女の子がお母さんの足にまとわりつく。




お母さんは動かない。




まるでその子がそこにいないかのよう。






女の子がお母さんから少し離れる。



お母さんはそのまま一人でエスカレーターから降り改札へ向かう。


女の子も一人で降りお母さんの後ろをついて行く。






偶然にも私たちと同じ出口に出るようで


前を歩く母娘の後ろを歩くことになった。






地下から地上に上がる長い階段を上っていく二人。


その後ろをついて行く私たち。






女の子の様子を見ることなく


自分のペースで上って行くお母さんに


私は段々とイライラし始める。






見てあげて


少しで良いから




守って


この子を





どこか


祈るような気持ちになっていた。







そのお母さんが地上に出たときに


やっと立ち止まって女の子を見た。









ほんの5分くらいの出来事。




でも、私にはとてもとても長かった。







あの女の子は今どうしているだろう。








私は何故


あの光景を見ることになったんだろう。







もうすぐ長女が巣立っていく今。





あちらこちらから


過去の投影が現れる。



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